2023年11月9日
カスハラ対策は企業の責任
今年9月に精神障害の労災認定基準が改正され、新たに「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスハラ)が心理的負荷評価表の具体的出来事に追加されました。増加するカスハラ事案とその心理的負荷の大きさを考慮しての対応といえるでしょう。
現状、カスハラについては業態・業種等の違いから、明確な定義はありませんが、一般的に、消費者や顧客の立場を利用して、企業に対して、理不尽な要求や謝罪を強要することをいいます。厚労省は一つの尺度として、企業への要求内容の妥当性に照らして、手段・態様が社会通念上不相当なもので、労働者の就業環境が害されるものとしています。
カスハラ増加の大きな要因の一つとして言われているのが、SNSなどの発達です。誰もが商品・サービスを評価し、インターネットを通じて容易に情報を拡散できるようになったことから、企業側も消費者の評価に敏感になり、また、消費者も権利意識や要求レベルを高めることになったとされます。近年であれば、コロナ禍でのストレスがカスハラ増加の要因とも言われています。いずれにしても、いかに顧客や取引先などのカスハラから従業員を守るかが企業の大きな課題になっているといえます。
現在、カスハラについては、セクハラ、パワハラ、マタハラのように事業主の防止措置義務に対象とはされていないものの、厚労省のパワハラ防止指針のなかで言及され、対応マニュアルが示されています。
しかし、業態・業種が異なれば、カスハラの内容も変わるため、一律的な対策に馴染まない面もあるでしょう。企業には従業員の生命・健康等を危険から守る安全配慮義務が課せられているわけですから、従業員がカスハラ対策で疲弊し、精神疾患などに罹患しないよう、自社としてのカスハラに対する姿勢を従業員に示すとともに、現場の従業員任せでない、組織的な対応の方策についてしっかり考えていく必要があるといえます。
福岡労務ニュース 2023年11月号の記事を再構成しました。
編集者:井上晴司
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