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2021年1月22日

同一労働同一賃金(基本給➀)

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賃金の付加的部分を除いた基本的部分が基本給であり、賃金総額に占める割合からも、また支給時の安定性からも賃金体系の根幹をなしているといえます。
また、会社ごとの人事政策上の考え方により、年齢給、職能給、職務給、役割給、業績・成果給といった基本給の性格も様々であり、正社員は月給制、パートタイマーは時間給という具合に賃金の捉え方も異なる場合が少なくありません。

基本給に関する均等・均衡待遇について、同一労働同一賃金ガイドラインでは、正社員と非正規社員とで、基本給の決定基準(能力、経験、業績、成果、勤続年数など)に照らし、その決定基準において同じなら同じ基本給を、一定の違いがあればその違いに応じた基本給を支給しなければならないとしています。

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しかし、実際には正社員と非正規社員とでは、例えば、正社員は職能給、非正規社員は職務給といったように、基本給の決定基準が異なるケースが多いといえます。
こうした場合の対応に関して、ガイドラインでは「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる等の主観的又は抽象的な説明では足りない」と述べるにとどまっています。

また、これまでの裁判例をみる限り、「職務の内容」、「職務の内容、配置の変更の範囲」などに違いがあることから基本給の相違が不合理と判断された事案は見当たりません。(例外的に、産業医科大学事件では正規職員と臨時職員の基本給で約2倍の格差について、臨時職員が30年以上の長期勤続だったことなどを理由に不合理と判断しています。)

なお、月給制と時給制の違いに関しては、ともに賃金の定め方として一般に受け入れられていることや、短時間勤務者に適した時給制の採用は不合理とはいえない(大阪医科薬科大学事件)とされており、会社ごとの人事施策であるとして不合理であるとまでは判断されることはなさそうです。

基本給の違いを裁判所が不合理な相違とまで判断することは少ないのが現状ですが、かといって正社員・非正規社員間で賃金水準に大きな差が生じていれば違法となる可能性が無いわけではありません。

会社の対応としては、自社の正社員と非正規社員について、基本給の決定基準が異なる場合であっても、その相違が合理的なものであることを検証しておく必要があります。

(福岡労務ニュース2021年2月号の記事を再構成しました。)
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2021年2月号の主な内容
求人票記載内容で労働契約は成立するか?
在宅勤務者(テレワーク)のルーズな働き方が気になるが法律的に問題ないか?


井上晴司

編集者:井上晴司

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