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2024年7月31日

直前確認!2024年10月社会保険の適用拡大への対応

2024年8月現在、パート・アルバイトなどの短時間労働者の社会保険加入義務は、厚生年金保険の被保険者数101人以上の企業等が対象です。そして、いよいよ10月からは、さらに加入要件が拡大され、「51人以上」の企業等で働く短時間労働者も社会保険の加入が義務化されます。

また、2024年4月16日に厚生労働省は、短時間労働者のほぼ全員が加入可能となる厚生年金の対象拡大案なども提示しました。今まで社会保険が適用されなかった短時間労働者も適用されるようになり、企業側の拠出や手続きは増える見通しです。

【テーマ1 社会保険と2024年10月からの変更点】

企業などで働く方が加入対象となる「社会保険(厚生年金保険と健康保険)」。フルタイム等で働く方だけでなく、一定の条件を満たすパートやアルバイトの方も社会保険の加入対象となります。

■「社会保険」とは?

よく聞くワードの「社会保険」ですが、冒頭のとおり、企業などで働く方が加入対象となる公的保険の総称です。社会保険の種類は広義の意味では、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」の5つがあります。狭義では「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」が“社会保険”、「労災保険」「雇用保険」が“労働保険”となります。

なお、これ以降の“社会保険”は、厚生年金保険と健康保険のことを指して記しています。

国の方針として、社会保険の適用対象をすべての勤労者に広げようという“勤労者皆保険”制度の実現を目指しています。これまで、社会保険の加入義務がある者は、法人の役員、フルタイム労働者以外に、「所定労働時間及び所定労働日数が、通常の就労者のおおむね4分の3以上」の短時間労働者とされており、短時間労働者の多くが適用対象外で十分なセーフティーネットを受けられていませんでした。今後はどのような雇用形態であっても企業で働く方は全員、社会保険に加入できるようにし、充実した社会保障を受けられるようにすべきという勤労者皆保険の方針のもと、段階的に社会保険の適用拡大が図られている現状があります。

■これまでの流れ

薄い社会保障のまま取り残されている短時間労働者に手厚い保障を受けさせようという国の方針があることから、段階的に社会保険の適用拡大が図られているわけですが、これまでの流れを確認してみましょう。

【適用拡大前】

週30時間以上(所定労働時間及び所定労働日数が、通常の就労者のおおむね4分の3以上)働く労働者が、社会保険の適用がされていた。

【2012年の法律改正】

2016年10月から、①週労働時間20時間以上、②月額賃金8.8万円以上、③勤務期間1年以上見込み、④学生は適用除外、⑤従業員500人超の企業という5つの要件のもとで、短時間労働者への適用拡大が施行された。

【2016年の法律改正】

2017年4月から、従業員500人以下の企業で、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大をおこなうことが可能となった。

【2020年の年金法改正】

【2012年の法律改正】5つの要件の中の、③の勤務期間1年以上見込みの要件を撤廃するとともに、⑤の企業規模要件を2022年10 月から100人超規模、2024年10月から50人超規模に引き下げられた。

【2025年の年金法改正(予定)】

企業規模要件の撤廃。5人以上のフルタイム労働者がいる個人事業所についても厚生年金の適用範囲が拡大される。

■2024年10月からの変更点

上述のとおり、2024年10月からは、厚生年金保険の被保険者数50人超(51人以上)の企業等で働く“短時間労働者”が社会保険の加入対象となります。

新たに社会保険の加入対象となる“短時間労働者”について再確認しておくと、

(1)週の所定労働時間が20時間以上

(2)月額賃金が8.8万円以上

(3)2か月を超える雇用見込み

(4)学生ではない

4点をすべて満たす人が加入対象となります。いずれか1つの要件を満たしていたとしても被保険者とはなりません。

【テーマ2 中小企業への影響】

テーマ1で、2024年10月以降、厚生年金保険の被保険者数「51人以上」の企業等は、社会保険の適用拡大の対象事業所となることをご説明しました。テーマ2では、対象事業所となった場合の影響についてご説明いたします。

■社会保険適用拡大の対象事業所となった場合の影響

社会保険適用拡大により対象事業所となった(なる可能性のある)場合の影響として、“保険料拠出額の増大”、“事務手続きの負担増”が挙げられます。具体的には、保険料について、会社側も半額を負担することになるため、社会保険適用による対象者が多いほど、経済的な負担が大きくなります。対象者の把握、社員への理解を得るために周知・丁寧な説明も必要です。対象者の「被保険者資格取得届」の提出のほか、保険料を算出するために標準報酬月額を決める必要があるなど、事務手続きも増えます

【テーマ3 社会保険適用拡大へのQA】

10月の短時間労働者の社会保険の適用拡大を目前にして、日本年金機構から「特定適用事業所該当事前のお知らせ」「特定適用事業所該当通知書」といった“通知”が届いている会社もあるのではないでしょうか。テーマ3では、社会保険適用拡大にあたって「特定適用事業所」に該当する可能性がある企業が感じる疑問点などを中心にQA形式でご説明いたします。

Q1.「特定適用事業所」とは何でしょうか?

A1.「特定適用事業所」とは、1年のうち6か月以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が常時50人を超えることが見込まれる企業等のことをいいます(※2024年10月以降)。

Q2.「被保険者の総数が常時 50 人を超える」とありますが、被保険者について、“適用拡大の対象となる短時間労働者”や“70 歳以上で健康保険のみ加入している被保険者”も対象に含めるのでしょうか?

A2.「特定適用事業所」に該当するか判断する際の被保険者とは、適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数なります(共済組合員たる厚生年金保険の被保険者を含む)。そのため、適用拡大の対象となる短時間労働者や70歳以上で健康保険のみ加入しているような方は対象に含めません

Q3.2024年10月から「特定適用事業所」に該当する(可能性がある)会社に対して、日本年金機構から通知が来るものなのでしょうか?

A3.通知が届きます。2023年10月から2024年7月までの各月のうち、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が6か月以上 50 人を超えたことが確認できた場合は、今年9月上旬までに対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付され、10 月上旬に「特定適用事業所該当通知書」が送付されます。

Q4.日本年金機構から「特定適用事業所該当通知書」が届いた場合、会社としてどのような対応をすればいいのでしょうか?

A4.法人事業所の場合、同一の法人番号を有するすべての適用事業所を代表する本店または主たる事業所から「特定適用事業所該当届」の届出をおこないます。個人事業所の場合は、各適用事業所から「特定適用事業所該当届」を届出します。

なお、特定適用事業所該当にともない、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は、各適用事業所が「被保険者資格取得届」を提出する必要があるため、届書の準備をおこないます。厚生年金保険の被保険者の総数51人~100人の企業は、10月7日までに厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を届け出る必要があります。健康保険組合が管掌する健康保険の「被保険者資格取得届」については、健康保険組合へ届け出ることになります。

Q5.「被保険者の総数が常時 50 人を超えなくなった」場合、特定適用事業所ではなくなりますか?

A5.使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時50人を超えなくなった場合であっても、引き続き特定適用事業所であるものとして取り扱われます

ただし、使用される被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添えて、日本年金機構の事務センター等へ「特定適用事業所不該当届」を届け出た場合は、対象の適用事業所は特定適用事業所に該当しなくなったものとして扱われることとなります。なお、「特定適用事業所不該当届」は、厚生年金保険の被保険者の総数が50人以下となった日以後であれば、その総数が常時50人を超えなくなった時点で提出可能です。

Q6.使用される被保険者の4分の3以上の同意を得て「特定適用事業所不該当届」を届け出た後、ほかに何かする手続きはありますか?

A6.短時間労働者に係る被保険者がいる場合は、あわせて「資格喪失届」の提出が必要となります。健康保険組合が管掌する健康保険の「被保険者資格喪失届」については、健康保険組合へ届け出ることになります。なお、届出による特定適用事業所の不該当年月日及び短時間労働者に係る被保険者の資格喪失年月日は受理日の翌日となります。

Q7.日本年金機構から「特定適用事業所該当事前のお知らせ」や「特定適用事業所該当通知書」が送付されてきましたが、施行日前に、被保険者の総数が 50 人を超えなくなった場合、特定適用事業所に該当したことを取り消すことはできますか?

A7.施行時においては「特定適用事業所該当取消申出書」を日本年金機構の事務センター等へ届け出ることにより、特定適用事業所に該当したことを取り消すことができます

Q8.「社保完備」は求人の魅力アップにつながると聞きました。被保険者の総数が常時50人を超えない企業ですが、適用拡大をすることは可能なのでしょうか?

A8.できます。50人以下の企業であっても、労使合意(働いている方々の2分の1以上と事業主の方が厚生年金保険・健康保険に加入することについて合意すること)がなされれば、日本年金機構の事務センター等に申出をおこなっていただくことで「任意特定適用事業所」となります。

以下の3要件をすべて満たす短時間労働者の方は、企業単位で厚生年金保険・健康保険に加入できます。

①1週の所定労働時間が20時間以上

②所定内賃金が月額8.8万円以上

③学生でない

Q9.任意特定適用事業所の労使合意に必要となる「働いている方々の2分の1以上の同意」とは具体的にどのようなものでしょうか?

A9.同意の対象となる「働いている方々(以下「同意対象者」という)」は、“厚生年金保険の被保険者”、“70歳以上被用者”、“上記A8の3要件を満たす短時間労働者”となります。これらの方々の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合の同意が必要になります。

同意対象者の過半数で組織する労働組合がない場合は、同意対象者の過半数を代表する者の同意、あるいは、同意対象者の2分の1以上の同意のいずれかが必要になります。

以上、社会保険適用拡大にあたって「特定適用事業所」に該当する可能性がある企業が感じる疑問点を中心にQA形式でご説明しました。自社が「特定適用事業所」に該当しそうか、また、今後の流れや手続きなどご不明な点がありましたら、お気軽にお問合せください。

 

井上晴司

編集者:井上晴司

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