2025年2月19日
2025年4月1日 改正育児介護休業法対応のための社内整備(前編)
2025年4月に育児・介護休業法および次世代育成支援対策推進法、雇用保険法が改正されることになり、中小企業にとっても、育児・介護休業規程などの社内規定や書式の見直し、雇用環境の整備が必要になります。
・・・テーマ1 改正育児・介護休業法で社内整備が必要な点は?・・・
育児・介護休業法が改正され、2025年4月1日(一部は同年10月1日)から施行されます。テーマ1では、4月1日施行に対応するために、社内整備が必要な点を【育児】と【介護】にわけてご説明いたします。
【育児】
2025年4月1日から施行され、中小企業に関係してくる内容としては、次の4つとなります。
①「子の看護休暇」が見直され、その対象者が拡大(義務)
②所定外労働の制限(残業免除)」の対象が拡大(義務)
③育児のためのテレワーク導入(努力義務)
④短時間勤務制度(3歳未満)(義務)の代替措置にテレワーク追加
また、同年10月1日から施行され、中小企業にも関係してくる内容としては、次の2つとなります。
⑤育児期の柔軟な働き方を実現するための措置等(義務)
⑥仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮(義務)
これらを念頭に、社内整備が必要な点は次のとおりです。
1.就業規則(育児・介護休業規程)の改定
上記①「子の看護休暇」、②「所定外労働の制限(残業免除)」、⑤「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置等」は義務となるため、改正内容をふまえた育児・介護休業規程の改定が必要です(※具体的な内容はテーマ2でご説明します)。
施行時期が、①と②は4月~、⑤は10月~と異なりますが、⑤の内容は企業規模によっては対象者が少ないor 直近で対象者が出ない可能性があるため、4月の改定時に盛り込んで前倒しで改定(施行)するか、附則等に施行日を2段階に分けて記載し改定(施行)する等のパターンが考えられます。
③について、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが努力義務化されることから、措置内容を検討し、導入する場合には、規程の改定が必要です。なお、④短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置に“テレワーク”が追加されます。もし、選択する場合には規程を見直す必要があります。
2.労使協定の改定
労使協定の締結により、“勤続(入社後)6か月未満の労働者”、“1週間の所定労働日数が2日以下の者”について「子の看護休暇」の対象から除外することができましたが、法改正により、“勤続(入社後)6か月未満の労働者”は協定の締結により除外できる労働者ではなくなりました。つまり、継続して雇用された期間にかかわらず、制度を利用できるようになります。もし、“勤続(入社後)6か月未満の労働者”を除外している場合には、改正内容をふまえて協定を締結し直します。
3.「個別周知・意向確認」など社内文書の改定
すでに作成済の「個別周知・意向確認」などの社内文書についても改定が必要です。厚生労働省サイト内に「個別周知・意向確認書記載例」の好事例が掲載されているので、改定の際には参考にされると良いでしょう。
【介護】
次に、【介護】ですが、2025年4月1日から施行され、中小企業に関係してくる内容としては、以下のとおりです。
1.雇用環境の整備(義務)
介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下の①~④いずれかの措置を講じる必要があります。措置内容を検討し、どれを実施するか検討しましょう。
①介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
②介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
④自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
2.労使協定の改定
【育児】「2.労使協定の改定」でご説明しましたが、「介護休暇」についても、労使協定の締結による“勤続(入社後)6か月未満の労働者”を除外する仕組みが撤廃されます。もし、“勤続(入社後)6か月未満の労働者”を除外している場合には、改正内容をふまえて協定を締結し直しましょう。
3.就業規則(育児・介護休業規程)の改定
要介護状態の対象家族を介護する労働者が“テレワーク”を選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。措置内容を検討し、導入する場合には、規程の改定が必要です。
2.労使協定の改定でご説明した「介護休暇」について、“勤続(入社後)6か月未満の労働者”を除外するために労使協定を締結している場合には、2の対応にくわえて、該当部分の就業規則(育児・介護休業規程)の見直しもしましょう。
4.「個別周知・意向確認」など社内文書の作成
“介護に直面した労働者が申し出た場合”に「個別周知」、“40歳に達した労働者など”には「情報提供」をする必要があることから、社内文書を作成します。こちらも、厚生労働省のサイト内に「個別周知・意向確認書記載例」の好事例が掲載されているので、作成の際には参考にされるのがお勧めです。
・・・テーマ2 育児・介護休業規程の見直しポイント・・・
テーマ2では、テーマ1でご説明した内容をふまえつつ、「育児・介護休業規程の見直しポイント」についてご説明いたします。
見直しポイント1:「子の看護休暇」、「介護休暇」の見直し
法改正により、「子の看護休暇」の取得事由が追加されることに伴い、制度の名称を「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に変更しましょう。また、対象となる子の年齢が“小学校3年生”まで延長されるため、その点も変更します。
追加された取得事由については、“感染症に伴う学級閉鎖等”や“入園(入学)式、卒園式”の2点です。これらの事由を追加します。さらに、労使協定の締結により除外できる労働者に、“勤続6か月未満の労働者”の仕組みが撤廃されたので、その点も修正します。なお、「介護休暇」についても同様となっているため、労使協定の締結により除外できる労働者から“勤続6か月未満の労働者”の文言は削除します。
見直しポイント2:「所定外労働の制限(残業免除)」の対象拡大
現行において、3歳に満たない子を養育する労働者は所定外労働の制限(残業免除)がされていますが、さらに対象が拡大されて、請求可能となる労働者の範囲は“小学校就学前の子”を養育する労働者となります。したがって、“3歳未満の子”→“小学校就学前の子”と修正する必要があります。
見直しポイント3:「柔軟な働き方を実現するための措置」の項目を新たに追加
ポイント1,2はすでに規定されていた項目の修正対応でしたが、ポイント3は新たな項目を追加する対応となります。
事業主は、“3歳から小学校就学前の子”を養育する労働者について、「柔軟な働き方を実現するための措置」以下5つの中から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。その中から、労働者は1つを選択して利用することができます。その旨を規定に盛り込みます。
①始業時刻等の変更
②テレワーク等(10日以上/月)
③保育施設の設置運営等
④就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
⑤短時間勤務制度
※②と④は、原則、時間単位で取得可とする必要があります。
なお、本改正は、当該措置により、労働者が子どもの年齢に応じて、柔軟な働き方を選択しながら、フルタイムで働くことを可能にすることを目的としています。
見直しポイント4:テレワークの導入
3歳未満の子を養育する労働者や要介護状態の対象家族を介護する労働者が、“テレワーク”を選択できるよう事業主に努力義務化されています。テレワーク勤務の対象者は、規定において明確化することが望ましいです。また、実施するにあたり、労働者本人が納得の上で実施する必要もあります。テレワークを該当対象者に認める場合には、必ず規程に盛り込みましょう。

編集者:井上晴司
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